アフリカとUAEで進行中の革新的なWeb3プロジェクトについて、Xeneaの共同創設者であるYuma Tanimoto氏がIT Committeeイベントでスピーチを行いました。
彼は、メディアの信頼性を高めるためのブロックチェーン技術の導入や、日本のレガシーがアフリカでどのように評価されているかについて詳しく語りました。本記事では、Yuma氏のスピーチから抜粋した重要なポイントを解説します。
Web3とAI技術がメディア業界をどのように変革するかについて
登壇者
- 川崎ひでと(自民党、衆議院議員)
- 渡辺創太(Astar創業者)
- 寺村 康(株式会社gumi Head of Blockchain Business)
- 林信行(ITジャーナリスト)
- 谷本祐真(Xenea共同創設者)
Xeneaプロジェクトの概要
Yuma Tanimoto氏は、Xeneaというプロジェクトの共同創設者であり、Xenea Foundationはドバイに拠点を置いています。
このプロジェクトはまだ公開されていませんが、ピアレビューされたL1 EVM互換のブロックチェーンであり、分散型ストレージを取り入れた安全かつ効率的なデータ管理を提供します。
ピアレビューと特許技術
「ピアレビュー」という言葉は、Xeneaの信頼性と革新性へのコミットメントを示しています。プロジェクトの主な特許技術は以下の3つです。
DACS (Decentralized Autonomous Content Storage)
DACSは、分散型自律コンテンツストレージであり、データを180日ごとに複製し、ストレージメディアの寿命からデータを保護します。
POD (Proof of Democracy)
以前は「Voting Proof of Work」と呼ばれていましたが、現在は「Proof of Democracy」に変更されました。ネットワーク内のウォレットをランダムに選択し、それらを投票ノードに変換して、各トランザクションの真の力を決定します。
Escrow Node
エスクローノードは、トランザクション内でエスクロー機能を果たします。これは、取引が安全に行われるようにするための重要な機能です。
将来の展望と地域活動
Xeneaプロジェクトは今年後半にメインネットのローンチを予定しており、Yuma氏はこの旅に皆さんが参加してくれることを期待しています。彼はエジプトのカイロを拠点に、西アフリカやMENA(中東・北アフリカ)地域での外交活動に焦点を当てています。
彼の経験と考えを共有できることを楽しみにしており、Xeneaプロジェクトがこれらの地域でどのように影響を与えるかについても語っています。
エジプトと西アフリカでの活動と課題
電力不足の現状
Yuma Tanimoto氏はエジプトを拠点に、西アフリカやアラブアフリカ地域で活動を行っています。これらの地域で直面している最大の問題は、電力不足です。例えば、エジプトでは日常的に2〜3時間の計画停電が発生しており、これがデータセンターの設置やブロックチェーンの運用に大きな障害となっています。このような基本的なインフラが整っていない現状では、Web3の技術を円滑に展開するのは難しいといえます。
日本の役割と可能性
Yuma氏は、日本がこれらの地域でインフラ整備にもっと注力すべきだと提言しています。具体的には、再生可能エネルギーの分野での貢献が考えられます。彼は、西アフリカのガンビアで再エネの可能性があることに触れ、マンゴーの果実、皮、種を利用したエネルギー生成の研究が進んでいることを紹介しています。
Yuma氏はガンビアデモクラティックコングレスの顧問も務めており、ガンビアでは電力不足と豊富なマンゴーの利用価値が未開拓であることを強調しています。ガンビアには日本の企業が参入できる余地が多くありますが、言語の障害や大使館がないことなどが障害となっています。日本の企業がこのような地域に参入することで、再生可能エネルギーの技術を提供し、地域のインフラ改善に寄与することが可能です。
日本のリーダーシップと将来の展望
Yuma氏は、Web3の観点から現地に歩み寄りつつも、日本がインフラ整備に力を入れることで、将来的にはWeb3の分野でリーダーシップを発揮できると考えています。再生可能エネルギーの研究や技術を活用し、電力不足などの現地の課題を解決することで、日本はこれからのWeb3時代において重要な役割を果たすことができるでしょう。
日本のレガシーとアフリカでのビジネス機会
日本のレガシーがもたらす信頼
Yuma Tanimoto氏は、アフリカで活動する中で、日本のレガシーが現地で非常に大きな信頼を得ていると述べています。特に、エジプトを含むアフリカ諸国では、日本のものづくりの伝統や品質が高く評価されており、これがビジネスの場でのスムーズな活動を可能にしています。現地の政府関係者からも、日本のレガシーが信頼の基盤となっているため、日本人と仕事をしたいという声が多く聞かれます。
日本の電子メーカーが苦戦している中で、サムソンやLGなどの韓国や台湾の企業が台頭している状況についても触れられています。しかし、これらの国々にはない日本の強みとして、ものづくりのレガシーが挙げられます。この強みは、日本企業がアフリカ市場で競争力を持つための重要な要素です。
ビジネス機会の活用
Yuma氏は、日本のレガシーを活かして、アフリカでのビジネス機会をもっと積極的に活用するべきだと提言しています。特に、Web3の領域で活動する中で、日本企業が現地での信頼を基に、さらに多くのプロジェクトを展開できる可能性を感じています。
日本政府への期待
最後に、Yuma氏は日本政府にも、国内外に向けて自信を持って日本のレガシーを発信してほしいと強調しています。日本のものづくりの伝統や品質は、現地でのビジネス活動において大きな武器となるため、政府の積極的なサポートが期待されます。
アフリカンユニオンにおけるWeb3とブロックチェーンの現状と可能性
アフリカンユニオンの取り組み
Yuma Tanimoto氏は、アフリカンユニオン(AU)がWeb3やブロックチェーン、AIの分野で積極的に取り組んでいるとは言い難いと述べています。国単位で議題に上がることはありますが、実際に行動に移すことは少ないのが現状です。
エジプトでは、スロベニアの企業カーゴエックスがブロックチェーン技術を使って関税の申告を行う取り組みが始まっています。これにより、Web3やブロックチェーンに対する抵抗感が少なく、前向きに検討されている印象があります。しかし、プレイヤーが非常に少なく、競争相手がいない状況です。
ライバル不在の問題
Yuma氏がエジプトやガンビア、セネガルの政府や中央銀行の関係者と話す際、Web3の話題については彼に聞くしかないという状況が生まれています。これは彼自身が信頼されている証拠である一方、産業全体としては懸念すべきことです。競争相手がいないことで、技術やサービスの進展が遅れる可能性があります。
先進国と途上国のニーズの違い
Yuma氏の考えでは、日本のような先進国では現時点でWeb3やブロックチェーンの急務は少ないと感じています。一方で、アフリカの途上国ではこれらの技術が急務であり、インフラ整備の観点からも重要な役割を果たすと考えています。
アフリカンユニオンに属する国々では、Web3のインフラ整備が非常に重要であり、多くのプロジェクトがこの地域に進出するべきだとYuma氏は主張しています。彼の運営するXeneaファンデーションでは、一つのプロジェクトで全ての地域をカバーすることは困難であるため、より多くのプロジェクトがこの地域に参入することが望ましいと感じています。
UAEなどの中東地域もアフリカと同様にWeb3のインフラ整備が必要であり、多くのプロジェクトがこれらの地域に進出することが求められています。
UAEにおけるメディアのブロックチェーン活用
メディア省の役割
UAEには七つのエミレーツ(首長国)がありますが、そのうちの一つのエミレーツには「メディア省」という省庁が存在します。このメディア省は、国内の全てのメディアアウトレットに対してディストリビューションシステムを提供しており、アブダビやドバイなど、他のエミレーツでも同じシステムを使用して記事の配信を行っています。
ブロックチェーン技術の導入
現在、このメディア省と協力して、ブロックチェーン技術を活用したシステムの導入が進められています。具体的には、ブロックチェーンを用いてメディアのオーセンティシティ(信憑性)を担保することを目指しています。これにより、情報の正確性や信頼性を高めることが期待されています。
外国へのシステム輸出の可能性
さらに、UAEのメディア省はこのブロックチェーンベースのディストリビューションシステムを外国に輸出する計画も検討しています。もしこのプロジェクトが成功すれば、UAEから世界に向けて高度なメディアディストリビューションシステムが提供されることになります。
このプロジェクトが順調に進めば、UAEの特定の首長国からブロックチェーン技術を活用したメディアディストリビューションシステムが登場する可能性が高いです。現在、具体的な議論が進行中であり、将来的には大きな成果が期待されています。
まとめ
Yuma Tanimoto氏のスピーチは、Web3とブロックチェーン技術がどのようにしてメディアの信頼性向上やインフラ整備に貢献できるかを示しています。特に、日本のレガシーがアフリカで高く評価されている点や、UAEの具体的な取り組みについての説明は、今後の技術革新と国際協力の重要性を強調しています。これからの展望として、多くのプロジェクトがこれらの技術を活用し、世界中で新たな可能性を切り開くことが期待されます。